2018年12月3日月曜日

「日本語のレトリック ―文章表現の技法」を読んだ感想


 頭のいい人はレトリックとか駆使して、かっこいい文章を書くんだろうなって思ってました。けれど、レトリックはかっこよくて高尚なもの、みたいな考え方は、たぶん誤解です。
 この本の著者も、「…日本のレトリックは、弁論術でも説得術でもなく、おもに詩歌を対象とした修辞学でした。」と言っているので、たぶん多くの人があやふやな理解ですませているのだと思います。

 日本人が「花見」と言うとき、「花」はほぼ間違いなく「桜」を意味します。
 これは提喩(synecdoche)というレトリックの例だそうです。
 そんなところに“レトリック”が隠れているとは、思いもしませんでした。

 著者の言葉によると、レトリックの一部は「私たちの思考法そのものに近い」ということで、この本はそのことを気づかせてくれました。
 岩波ジュニア新書に書かれていることを、30過ぎた人間がなるほどと読むのもすごく悔しいものですが、たぶんこれは名著なんだと思います。

 個人的なこの本最大の感動部分は、最終章「レトリックを文章に生かす」の部分にありました。ここでは、本編で長々とレトリックの技法を紹介した最後に、著者が冒頭「はじめに」で書いた文章を自ら解説しています。こんなにも丁寧に自分の文章の意図や技法を解説するシーンは珍しいと思ったので、これにはまいりました。
 あくまでも個人的なお気に入りポイントですが。

 とりあえず、この本も本棚から捨てられない認定をすることになりました。

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