2018年12月21日金曜日

「宇宙は何でできているのか」を読んだ感想


 この本は、2011年の新書大賞に輝いたベストセラーのようです。

 前半は宇宙すごい、宇宙すごい、とグイグイ読ませる内容でした。
 ところどころ、こんな感じ↓で微妙なジョークが入っていて、ニヤニヤします。

“たとえばアメリカのバークレー国立研究所にある電子顕微鏡が電子にかける電圧は、30万ボルト。『ポケットモンスター』のピカチュウ君が備えている攻撃力の3倍ですから、相当なエネルギーですね。”

 ただ、後半で素粒子を順々に語り始めると、正直もう何を言っているのかさっぱりわかりません。
 繰り返しでてくる「もうおわかりですね」という言い回しに、いやーまったくわからないんだけどなー、と苦笑しつつ、ただただ文字を追い、雰囲気を味わうに留まってしまいました。

 それでもなんだかんだ最後まで読ませてしまうのは、たぶん著者の情熱かなあと思いました。
 本文中では、いたるところに日本のノーベル賞受賞者を織り交ぜて説明していて、日本人はこんなにも物理学に貢献しているのかと関心してしまいますが、きっと将来的には著者もそこに入るような学者なんだと思います。
 そのような超一流の学者であるにもかかわらず、自分の研究時間を割いて色々なところでメディアに出たり、こういった入門的な本を書いたりするのは、なかなかできることではないはずです。

 物理法則における究極の真理について、こんなふうに語っていました。

“もちろん私たち物理学者は、必ずそこに到達できると信じて日々努力しています。その研究に必要なエネルギーを高め、スピードを加速するには、多くの人々がこの学問に興味や関心を抱き、理解が深まるような環境をつくることも必要でしょう。素粒子物理学が何を目指しているのかを知り、それを「面白い」と思う人々が増えれば、人材やお金などの「エネルギー」がこれまで以上に集まるに違いありません。”

 ただ自分の研究を進めるだけでなく、裾野を広げるかたちで目的を達するような人物がノーベル賞に輝いたら、すごいと思います。最近、著者たちが推進している国際リニアコライダーの日本誘致が見送られるのではないかというニュースを見ますが、どうなるのでしょう。まあ、これがダメでも他に色々あるんだとは思いますが。

 この本は、ヒッグス粒子の発見がノーベル賞を受賞する前の時代に書かれているので、たった数年なのに、少し内容が古くなっています。
 今日みたニュースでは、暗黒物質とダークエネルギーを統合した「暗黒流体」なる概念が提唱されたとか言うので、最近の動向も追加したアップデート版が是非ともほしいなと思いました。

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