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2018年12月27日木曜日

「上品な話し方」を読んだ感想


 お上品な御婦人が、お上品に小言をいう本です。
 「上品な話し方」から大きく脱線して、現代人の言葉遣いやマナーなどについてあれこれ言っています。

 著者は冠婚葬祭入門シリーズなるもので700万部のベストセラーを出した方なので、なるほどなと思うところも多いですが、いくらお上品にいっても小言は小言なので、お上品になりきれない、苦しいところがあったりします。
 「こういう人は下品です」と言ってしまうと、たしかにそれが正しいとしても、読者としてはみなまで言うなという気持ちがして、お上品の説得力が弱くなってしまう気がするのです。
 これは、著者自身が下品と思われる危険を顧みずにお上品を語った、お上品の理想論と考えるのが好意的かもしれません。
 本の内容には、ガラケーの扱いやファクシミリの送り方など、時代を感じさせるものがあって、それはそれで面白い小話だったりします。

 話は転じますが、著者の語るお作法をどこまで真に受けるかは、個人の判断次第だと思います。
 Wikipediaによると、「目上の人には履物を贈らない」というマナーを世に広めたのは、この著者の「冠婚葬祭入門」なる本に一因があるそうです。後からクレームがついて「贈ってもよい」と正反対のマナーを掲げるに至ったようですが。
 最近は、「とっくりの注ぎ口を使ってお酌してはならない」という謎マナーが話題になっていましたが、出処はどうせ誰かの思いつきなのです。
 マナーを語るのは結構ですが、それについて他の人を納得させられず、押し付けようとするならば、もはやそれは迷惑な言動でしょう。

 マナーはこっそり学んで、こっそり実践するのが、スマートなスタイルなのかなと思いました。

2018年12月18日火曜日

「9割がバイトでも最高のスタッフに育つディズニーの教え方」を読んだ感想


 そや氏はディズニーランドに行ったことがないので、そこがどれだけすごい所なのかはよく知りません。すごいすごいという声はよく聞くので、たぶんすごいところなんだと思っています。

 この本によれば、ディズニーは年間何千人もの新規バイトを雇って、一人前に教育しているそうです。
 教育係も多くはバイトで、驚いたことに、その教育係になっても、得られるのは栄誉あるバッジだけなんだとか。
 特に金銭的手当が付くわけでもないけれど、ディズニーはビジョンがしっかりしているから、みんな喜びを感じながら仕事をしている、とのこと。

 ディズニーみたいなキラキラした後ろ盾があるところはそれでもいいですけどね、他所ではなかなか真似できないだろうな、と思いました。
 ディズニーの教え方を実践するには、まずディズニーのような組織を作るところから始めないとまずそうです。

 アマゾンのレビューでは結構評価が割れていて、高評価の言い分も低評価の言い分も、ごもっともな感じです。実際、読みやすくて面白い本です。

 というかアマゾンのレビューってなかなか参考になりますね。
 こんなところに書く感想文の内容くらいだったらすでに書いてあったりしますし。
 ブログ存続意義の危機を感じます。

2018年12月16日日曜日

「現代ヤクザに学ぶ最強交渉・処世術」を読んだ感想


 タイトルに「最強」とあったので、どれだけ凄いのかと思って手を出してみました。
 ヤクザ小説のような部分とその解説で構成された、少し変わったハウツー本みたいなものだと思います。

 その業界の知識なしで読むと話の展開がよくわからない、という部分もけっこうありますが、なんとなく雰囲気だけは伝わる気がします。さっそく真似しよう、とは思いませんが。
 たぶん、ヤクザのやり方を自分の攻撃手段として参考にするよりは、こんな怪しい人たちがいるという事実を覚悟しておくための防御手段として参考にすればいいのだと思います。

 下手して身を滅ぼしたり、その手の人たちのカモになったら間違いなくヤバイので、できるだけ近づかないのが正解のはずです。

2018年12月14日金曜日

「宇宙飛行士の育て方」を読んだ感想


 結婚生活を初めて1週間が過ぎた頃、思うところあってこの本を買いました。
 ひとつ屋根の下で2人が共同生活を営むのは、ちょっとした極限状態に似ていて、下手をすると宇宙兄弟で読んだ閉鎖環境空間試験のような心理状態になってしまうのではないかと恐れたからでした。
 なので、閉鎖空間ストレスについてもう少し詳しく書いてありそうなこの本を手にとって傾向と対策を練ろうと考えたのですが、それ宇宙兄弟に書いてあったよ、みたいな話や繰り返しの内容が多く、結局最後まで読まずに2年以上放置してしまいました。

 最近ようやく最後まで読んでみたら、後半部分にはアメリカとロシアのチーム協力体制がうまく機能しなかった時代の話や、途中で日本人メンバーが脱落してしまった国際共同研究の長期閉鎖実験の失敗談などが書いてあり、なかなか興味深い情報もあったので、もう少し早めに読んでおいてもよかったなと思いました。

 でも、本のタイトルからして、読者が期待するのは良いチームを構成する優れた能力の「育て方」なんですよね。
 紹介されているエピソードとしては、日本人宇宙飛行士が選抜試験の時に示した抜群の人間力といったものが目立つので、これじゃあ宇宙飛行士の「選び方」だなとも思いました。
 宇宙飛行士に選ばれた人が選抜試験の段階で高い人間力を持っていたことを知りたいのではなくて、どのようにしたら、平凡な一般人が優れたチームを構築するメンバーに成長できるのかを知りたいのです。

 とはいえ、どのような点の優れていることが良いチームメンバーの条件なのか、みたいな情報も少なからず載っているので、そこをヒントに一般人の生活にも応用していけるような気もしました。
 ほとんどは、コミュニケーションを意識的に確保しよう、とか当たり前のことばかりなんですがね。
 その当たり前のことが、できないんですよね。

2018年12月8日土曜日

「信じることと、疑うことと」を読んだ感想


 近所の図書館で、リサイクル図書として放出されていたので読んでみました。
 1982年から85年にかけて書かれた時事や思想を絡めたエッセイですが、ほとんど現在にも通じる内容です。
 ところどころ、ロッキード事件や戸塚ヨットスクール事件の裁判進行をリアルタイムで語るところに時代を感じさせる他は、第一章「管理社会の時代は、もう来ているのか」など、30年以上前から世の中の問題は変わっていないのかと驚くほどでした。

 著者のなだいなだ氏、名前は聞いていましたがもう亡くなっているんですね。

(引用)“ぼくは、あちこちから講演会に呼ばれます。そして、こまめに出かけて行って話をします。生きた人間に話をするのは、いつどこで読んでくれるかわからない読者に向けて書く仕事よりも、反応がすぐに見られるという利点があります。自分の考えと、世の中の他の人たちとの感覚のずれが心配になる時、聞き手の反応に手ごたえが感じられれば自信をとりもどせるので、ぼくにとって有益なのです。”

 こういった箇所を読むと、著者が亡くなった後に古い本を掘り返して読んでなるほどなどと頷くのは、どうなんだろうと思います。微妙ですかね。
 それはそれで、本なりの役目でしょうか。
 この本の他にも、著者の代表作と言われるような本がいくつもあるので、今度はそっちにも手を出してみようと思いました。

 ところで、本文中にこんなことが書かれてました。

(引用)“分かる。分からない。人間は、どうやらその点にこだわってずっと生きてきたし、これからもずっと生きていくように思われます。”


 ツイッターで突然「わかる」とか呟くのって、あれ何なんでしょうね。
 ずっと気になっていたんですけど、全然わからないです。


 いや、なんとなく場慣れしているふりして何度もそんなことしてみましたけど、全然わからないです。



 ほんと、なんなんでしょう。

2018年12月5日水曜日

「ネオフィリア ―新しもの好きの生態学」を読んだ感想


 とある大学の文化人類学の先生が薦めていたので、読んでみました。
 何故、人類だけが地球上で特別な進化と繁栄を遂げたのか、という疑問について、人間は新しもの好き(neophilic)という性質を持っていたからだ、という説を展開するエッセイです。
 タイトルに「生態学」とありますが、一般的な科学読本ではなく、多分に著者の思想が入り込んだエッセイでした。

 純粋な科学の本じゃないです。こんな記述がでてきます。

“大気は酸素と窒素に満ち、しかもまるで化学法則に挑む奇術師のごとく、この爆発性のふたつの気体を結合もさせずに、浮遊させている。風は立ち、生命は栄える、あらゆる予想を裏切って。”

 窒素ガスは極めて安定なはずなのに、この著者は大丈夫だろうかと思って調べてみたところ、どうやら著者のライアル・ワトソン氏は、動物行動学など複数の学位を持つ知の巨人でありながら、虚実織り交ぜて物事を語る癖があるらしく、「百匹目の猿現象」や「グリセリンの結晶化に関する都市伝説」という残念な黒歴史を抱えている方だったようです。
(詳しくはWikipediaにその項目があります…)

 この本の中でも、オカルトや宗教世界の怪しげな話を展開するので、何度も途中で投げ出そうかと思いました。
 けれど、ところどころに出てくる科学の知見について著者の知識量が膨大なのは十分窺わせるものがあるし、こんな感じで(↓)著者も開き直ってるような節があったので、読むのも辛いけど、最後までお付き合いすることにしました。

“傷をつけても出血しない、心臓を止められる、地中に埋められても生きていられる、火傷もせずに火の上を歩く。こうしたことはすべて不可能だと科学は教え、それができるといわれる人の情報を無視する。これは惜しむべきことだとわたしは思う。”

 著者は、科学技術が無秩序に発展するのを警戒していたのだと思います。
 ただ、その警鐘の鳴らし方が少し奇抜すぎるのは、実に惜しい感じがします。

 長くなりますが、下の方に著者の結びのことばを引用します。
 この文章が書かれたのは1988年ということですが、最近(2018年末)になってHIVに対する免疫を遺伝子操作で与えられた双子が中国で産まれたとニュースになっていたので、著者は本当にたいした先見の明だと思います。
 本の中身はいろんな方面にぶっ飛んでいて、少しトンデモな本の匂いもしますが、著者のかかえる思想や主張は真っ当なのかもしれません。

“西暦2000年までには、われわれの抱えるおおかたの問題は解決されるだろうといわれている。水不足も、南極から曳いてくる氷山のおかげで、遠い過去の語り草になることだろう。あらゆるものに効く錠剤が開発され、発毛から虫歯予防まで、なんでもござれだ。結核や癌やエイズに対しても、生まれつき免疫をもつようになるだろう。人工肝臓や人工脾臓の助けをかりて寿命は長くなる。みんなが自動車を所有し、その重量も燃費も半減する。コンピュータがキャッシュレス社会を管理し、科学は有人宇宙ステーションを使って宇宙の謎を思うままに解き明かしていくことだろう…。大いにありうることである。わが人類の、御都合主義と好奇心はたいしたものだ。アメリカやオーストラリアや中国といった豊かな資源をもつ国々にとっては、こうした空想が現実となる可能性はある。だが世界の大半の住人には、これとおよそかけ離れた現実しか待ち受けていない。”

“われわれの技術的な能力と、社会的な面でそれに劣らぬ創意を発揮する意志とが結びつかなければ無理だ。そしてそれには、永遠なる経済成長という甘い夢を断ち切り、遺伝子バンクに相当するものを、文化面でも作り出すこと以外に方法はないとわたしは思う。人間の多様性を大切にし、これを維持していかねばならない。残された豊かな伝統を尊重し、保護すべきである。多様な、常に新しいものを求めるわれわれの欲求を満たすと同時に、この惑星地球を豊かに培うために必要なのだ。”

2018年12月3日月曜日

「日本語のレトリック ―文章表現の技法」を読んだ感想


 頭のいい人はレトリックとか駆使して、かっこいい文章を書くんだろうなって思ってました。けれど、レトリックはかっこよくて高尚なもの、みたいな考え方は、たぶん誤解です。
 この本の著者も、「…日本のレトリックは、弁論術でも説得術でもなく、おもに詩歌を対象とした修辞学でした。」と言っているので、たぶん多くの人があやふやな理解ですませているのだと思います。

 日本人が「花見」と言うとき、「花」はほぼ間違いなく「桜」を意味します。
 これは提喩(synecdoche)というレトリックの例だそうです。
 そんなところに“レトリック”が隠れているとは、思いもしませんでした。

 著者の言葉によると、レトリックの一部は「私たちの思考法そのものに近い」ということで、この本はそのことを気づかせてくれました。
 岩波ジュニア新書に書かれていることを、30過ぎた人間がなるほどと読むのもすごく悔しいものですが、たぶんこれは名著なんだと思います。

 個人的なこの本最大の感動部分は、最終章「レトリックを文章に生かす」の部分にありました。ここでは、本編で長々とレトリックの技法を紹介した最後に、著者が冒頭「はじめに」で書いた文章を自ら解説しています。こんなにも丁寧に自分の文章の意図や技法を解説するシーンは珍しいと思ったので、これにはまいりました。
 あくまでも個人的なお気に入りポイントですが。

 とりあえず、この本も本棚から捨てられない認定をすることになりました。

2018年12月1日土曜日

「勉強はやめて、けもの道を走ろう!-愚直な人ほど仕事がうまくいく」を読んだ感想


 ヤフーの期間限定ポイントが中途半端に残ると、なんかもったいないので100円くらいの古本をヤフオクで落札しています。
 アマゾンと違って、ヤフオクは本を探すのに適していないのであまり吟味していませんが、この本はメインタイトルの「勉強はやめて、けもの道を走ろう」が気になって買いました。
 けれど、なぜ勉強をやめる必要があるのかの説明は少なく、「けもの道」とは何かについての話の広がりもイマイチだったように思います。
 サブタイトルの「愚直な人ほど仕事がうまくいく」は、大体そのようなことが書いてありました。
 こっちをメインタイトルにするべきじゃないですかね。

 本の中には、成功者による自己啓発本にありがちな自分語りがちょこちょこと出てきていて、著者の久恒啓一氏が趣味で全国の偉人記念館を数多く訪問している、という活動が紹介されていたのは、なかなか興味深かったです。なぜそこに目をつけたのか、と感心してしまう面白い趣味だと思いました。
 そっちの内容で書いた本があれば、少しだけ読んでみたいかな、という気がします。

2018年11月25日日曜日

「本は10冊同時に読め!」を読んだ感想


 正式タイトルは「本は10冊同時に読め! ― 本を読まない人はサルである!」

 本のメッセージは、タイトルの通りだと思います。
 本を読まない人はサルだ、バカにされたくなければ多読しろ、みたいな感じです。
 ほぼ全編に渡って、人の劣等感を刺激するような挑発が入っています。

 著者の成毛眞氏は、35歳でマイクロソフト日本法人の社長となった人物です。
 その事実を知ってしまったそや氏(35)は、うだつの上がらない契約社員の自身の情況を憂い、過激な挑発を聞いてもはいそうですね、仰るとおりです、と押し黙るばかりです。

 とにかくやたらと凡人の劣等感を刺激してきますが、唯一救われた点としては、40過ぎの一般サラリーマンに薦める本はあるだろうか、という節で、「そんなものはない」とばっさり切り捨てていたことが、逆に、30代の人間にはまだ微粒子レベルでも将来に可能性が残されているのかな、という気持ちにさせてくれたことくらいでしょうか。

(引用)“(40代・50代が読むべき本について)そんなものはない。もう手遅れなので、何を読んでもムダである。本人も、この先出世の見こみもないことぐらいはわかっているだろう。後は働きアリに徹するか、早期退職してソバ打ち教室に通ってソバ屋をはじめるか、選択肢はそれぐらいではないだろうか。”

 その他、少し気になったところを引用します。

“アメリカ人のエリートは『金持ち父さん 貧乏父さん』を読んでいたとしても、絶対に人にはいわない。それどころか、「はあ? 何それ」という感じで知らないふりをする。その手の本を知っていること自体で、レベルが低い人間だと見なされる恐れがあるからだ。”

 どうやら、ベストセラーやハウツー本は恥ずかしいから読むな、ということみたいです。
 この本もハウツー本的なところがあるような気がするので、こういった箇所を読んでいると、あぁ…こんな本を読んでいる自分はダメなんだ、と思ったりもするのです。

 あともうひとつ、辛いところ。

“この本を読んでいる読者は、まさかノウハウ本に線を引いたりしていないだろう。(中略)線を引くなどという愚かな行為をする人はいないと信じたい。”

 そや氏は気になったところにポストイットをペタペタ貼ってしまったので、もうダメです。
 語りが刺激的なので面白い本だなと思う一方で、この本を面白いとか思ってる限り凡人庶民なんだろうな、と辛くなる本でした。
 この手の本は、著者の言うとおりこっそり読むのが良いんだと思います。

2018年11月21日水曜日

「アナタはなぜチェックリストを使わないのか?」を読んだ感想


 ブログのタイトルには、「あなたの〜」や「あなたが〜」をつけて、おまけに人のコンプレックスを刺激すると、人々の注目を集められて効果的らしいです。
 この本からは、「ほら、そこの平凡なあなたも簡単なチェックリストを使う習慣をつければこの著者みたいに立派な仕事ができますよ?」みたいな匂いがプンプンしていて、そや氏もそれにつられた一人です。

 しかしながら、この本は「アナタ」が「チェックリストを使わない」理由を教えてはくれません。
 チェックリストを作ってみたらうまくいきました、みたいな事例紹介ばかりです。
 じゃあどんなチェックリストを作っているのかな?と思っても、紹介しているのが医療業界や航空業界のことで、ちょっと遠い世界の感じです。

 著者のアトゥール・ガワンデ氏はアメリカの外科医で、世界で最も影響力のある100人にも選ばれたことのあるすごい人です。
 原著のタイトルは
“The Checklist Manifesto: How to Get Things Right”
ということなので、煽りタイトルは日本の編集者が時代に合わせて勝手につけたのでしょう。

 タイトルと内容の翻訳の仕方が違えば、印象も違ったように思います。
 とはいえ、タイトルを見ただけでもチェックリストを導入してみようかな、という気持ちにさせるので、タイトルだけでもぜひ読んでみて下さい。内容は、読まなくてもいいと思います。